川原達二の十中八九N・G

4/Ⅱ.(水)2015 くもり

※受付の求人の応募のための視察の方は、1つ前の、後藤さんが書いた記事を参考にどうぞ※

昨日は節分だそうで、今日は立春だそうで、カワクリも新しい人材が加入しつつある。
今日、緊急にお伝えしたいメッセージがある。
それは、僕の知っているサクセス・ストーリーは、皆、黒星スタートだ、である。
プロの洗礼、とでも言うべきか。

アントニオ猪木のデビュー戦は、大木金太郎に頭突きでフォール負け。
(ちなみに、同日デビューのジャイアント馬場は田中米太郎に勝っている)
その後のサクセスは猪木、という文脈で使っている。(反対意見もあるだろうが)

新人・長嶋茂雄の開幕戦は、国鉄スワローズの金田正一の前に4打席4連続三振。
世界のホームラン王・王貞治は、デビューから26打数ノーヒット。
下は、横尾忠則のポスト・カードの「ON」。王と長嶋だから、オーエヌ、ね。↓。

僕も研修医に成り立ての頃、無断欠勤がバレて、ペナルティーで「2週間連続当直」の刑になった。

今でもそうだが、医者の当直は、翌日も勤務である。
当直は当直室で仮眠して、呼ばれたらすぐ病棟や救急外来に行くのが仕事。
だから、運が悪ければ、2週間まともに寝れないのだ。

でも僕は、へこたれなかった。勿論、自業自得だと反省した、のではない。
2週間、当直室から家に帰れない泊り込みという状況が、「日本一のホラ吹き男」の植木等みたいだと思ったからで。

映画で、臨時雇いで会社に入った植木等が配属された部署は、会社にとって何の関係もない古い書類の整理。
皆、やる気がない。
「ここじゃ、いくら頑張っても出世はないよ」と先輩から言われる。

すると、植木等は、底抜けに明るいテンションで、張り切って、荷物をまとめて会社に泊まり込み、仕事をする。
「そんなにまでして残業代が欲しいのか」という皮肉にも、<いいえ、残業代はビタ一文、いりません>。
そして、1人で、書類を全部、片付けてしまう。

労働組合は残業して残業代を取らないことを問題視し、同じ職場の人間達は「仕事がなくなってしまった」と不満を言う。
そうして、会社は仕方なく、植木等を他の部署に係長待遇で異動させる。ここからホップ・ステップ・ジャンプ!
東京オリンピックの直後の映画で元・三段跳びの選手だったという設定の植木等は、三段跳びの様に出世して行く。
高度経済成長の時代のサラリーマンに元気を与えたと言われる映画だが、今、観ても色褪せないパワーだ。

なので、僕も植木等のマネをして、家から色んな物を当直室に持ち込んだ。
浅草のマルベル堂で、クレージーキャッツのブロマイドをオーダーメイドで引き伸ばしてもらった。
それを当直室の壁に貼った。
陰気な当直室が、まるで僕の1人暮らしの部屋みたいに衣替えした。

評判を聞いて、何人もの看護婦さんや他科の研修医も覗きに来た。皆、「お~」って言ってた。
精神科の先輩には、「川原、やりすぎ!」と注意されたが、怒られはしなかったから、スルーした。

今思うと、カワクリの空間作りのルーツは、この当直室に起源があったのかも。
クレージーの特注ブロマイドは、今もカワクリの待合室のテレビ側のソファの方に貼ってあります。↓。

丁度、半分の1週間が終った時点で、調子に乗った僕は、「トニー谷」のブロマイドの特注も発注した。
そのニュースに異常に反応した人たちがいた。
さて、問題です。
それは誰だと思いますか?
シンキング・タイム。

って言うか、皆さん、トニー谷、知ってます?

さて問題の答えです。
正解は、病棟のナース達でした。

意外と女性には、つらそうな姿をアピールするより、平気の平左、で明るく振舞った方が母性本能をくすぐるみたいだ。

ナースは一丸となって、僕の味方をした。
彼女らのナイチンゲール精神は組織立って、医者や教授や医局長に「いくら何でも可愛そうだ」と意義を申し立てた。

「過重労働でミスが起きたらどうするつもり?」
「川原先生だから笑って仕事が出来ているのよ」
「いえ、ああ見えて、顔で笑って心で泣いているのよ」
「あぁ、いじらしい」
「それに比べて、他の医者は川原先生に仕事を押し付けて、楽をしてるのよ」
「他の医者は、ズルイわ」

などと、本来、僕が無断欠勤したのが問題なのに、矛先が他の医者に向いた。

実際は、僕は研修医だったから、当直には必ず上級医の先生が日替わりで付いていてた。
「2週間当直」というのは、半分、洒落だった。
つまり、学生気分の抜けない僕に社会人の厳しさを教え込ませるための親心であり、問題を大きくしない配慮だった。
そして、2週間、毎日、日替わりで色んな先輩から、生の知識を吸収できるチャンスを用意してくれたのだった。
僕は、ゴールデン・ルーキーで、精神科医として期待されていたのだ。

そんな内輪な洒落は、ナースには通じない。
彼女らは、川原先生を守るためにはストライキも辞さず、の構えだ。
病棟でナースにストなどされたら、大変だ。
医者が、検温や配膳や採血や保清など、駈けずり回らなければならなくなる。
ナース・コールも医者がとる事態になる。
これには上層部もあわて、急遽、僕のペナルティーは1週間で解除された。
そして、医局長はナースの前で、僕を労う為の1席を自腹でもうける約束までさせられた。

憎憎しげに、医局長が、「川原君、何を食べたいんだい?」と僕にだけ見える角度で恐ろしい顔をして質問した。

僕は、<●●のうなぎ>と高級な鰻屋の名前を告げ、<個室で、コースにしてね>と答えた。
ナースを納得させるには、そうとでも言うしかない。それが最善の策だった。
そして、僕と医局長は週末、本当に二人きりで、鰻屋の個室でコースを食べたのでした。
さすが、名店!、うまかったですよ。
もう皆さん、ご承知かもしれませんが、僕はこういう空気、平気なんだ。

えーと、何を言いたいかと言うと、<始めから上手く行く人はいない!>、ということです。
最初は皆、黒星スタートなんだから、皆、そんなものだよ、ってことです。
だから、腐らずに頑張ろう!、というカワクリ新スタッフへの、エールのつもりで書いたのですが…。
趣旨、伝わったかしら?

もし情報にノイズが発生していたら、それはきっと植木等のせいだと思う。
猪木とONのエピソードだけ読み直して、その後はカットで。

BGM. 植木等(ハナ肇とクレイジーキャッツ)「無責任一代男」

4 Responses to “プロの洗礼~「ヒーローは、敗北からスタートしている」”

  1. トモトモ

    先生、こんにちは。

    待合室のクレージーキャッツのブロマイドには、こんな歴史があったのですね!

    トニー谷って「あなたのお名前、なんてぇの?」の人ですよね。それだけは、リアルタイムで記憶があります。
    あと、「日本の喜劇人」という本に載っていたと思います。途中まで読んで、期限切れで図書館に返しましたが。(私には読むのが苦行のような本でした。でも一応読んでみようかと思って、借りたのです。半分くらいは読みましたよ。)

  2. kawahara

    トモトモさん、こんにちは。

    トニー谷は、CDが出てますよ。監修は、大瀧詠一。
    大瀧詠一は、「クレージー・キャッツ・デラックス」という映画の名場面集もプロデュースしています。
    大瀧詠一は、音楽より笑いの方がカッコイイと思っていたんじゃないかな、と思います。

    小林宣彦の「日本の喜劇人」の、トニー谷の章は、迫力があって読み応えがありますよ。
    あの本は、エノケン・ロッパから始まるから、僕らの世代には読みづらいですよね。
    新潮文庫版は、後ろの方から読んで時代を遡って行くのがコツですね。
    確か、「たけし」「タモリ」で終っているから、そこからだと入りやすいです。

    ま、苦行をする必要はないですが。
    ではまた~

  3. sin

    植木等は名前は良くしっているんですが、映画とかは見た事がなかったかなぁ。

    歌を歌ってませんでしたっけ、スーダラ節とかなんとか?

    昭和の適当男とかなんとか言われてたような。

  4. kawahara

    sinさん

    植木等は、元々は、本格的なジャズ・シンガーを目指していた真面目な人だったそうです。
    「スーダラ節」を貰った時に、こんなふざけた歌を歌えるか?、と悩んだそうです。
    そしてお寺の住職をしている父に相談したところ、「わかっちゃいるけど、やめられない」は親鸞の教えに通じる。
    この作詞をした青島君という人は偉い!と言ったそうで。
    そこで植木等は、「スーダラ節」を歌うことに決め、迷っていたのが、いざ歌うと決めたら、あのはち切れ振りです。

    平成になって植木等の再ブレークがあって、「スーダラ伝説」というクレージー・メドレーがヒットしました。
    その年の紅白にも出て、白組メンバーが応援に舞台に出て歌い踊る、狂喜乱舞。
    まるでフィナーレのような盛り上がりの中、さすが植木等は存在感を見せ付けました。
    その順番の赤組は、おどるポンポコリン、でした。ちびまる子ちゃんの歌ね。

    適当男は、高田順次。
    植木等は、無責任男。

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